2003年01月28日

●築地俊造、大工哲弘、RIKKI in サントリーホール

1/27、赤坂サントリーホールで「島唄〜過去から未来へ歌い継ぐ〜」というイベント。出演は築地俊造さん、大工哲弘さん(てっちー!)、RIKKIさんという豪華メンバー、しかも無料!というのにひかれて雨のなか足を運ぶ。え?あの大ホールでやるの?と思っていたら実は小ホール(それでも500人近くのキャパ)。主催は総合研究大学院大学ということで、案の定、会場はなにやらお上品な雰囲気...。

前半は、文化人類学者の先生2人と出演者3人のトークセッション。テーマはひとことで言えば「世代間交流」。奄美の唄遊び(うたあしび)、沖縄の毛遊び(もうあしび)のように、老若男女が夜を徹して唄の掛け合いや踊りを楽しみ、文化を伝承している状況をモデルケースにしたいらしい。大工さんは、沖縄本島のエイサーや白保のお祭りの様子を紹介。「沖縄では、エイサーの時期に暴走族がいなくなる、ということわざがあります」と会場を笑わす。

築地さんは、現在の島唄伝承の問題点を指摘。いま奄美によくある民謡教室は、先生の唄だけに染まってしまい、各集落(シマ)ごとの唄の特徴を消してしまうおそれがあるとのこと。また、本来はその場の全員が掛け合って遊ぶ島唄が、現在は見せる側と見る側に分かれがちで、これを以前の唄遊びの形態に戻していきたい、とも語る。沖縄と違って工工四(楽譜)がない奄美民謡だからこそ、どう伝承していくかが大切ということだろう。

築地さんがいうには、本当の唄遊びを幼少時の記憶として持つ最後の世代がRIKKIの世代とのこと。そのRIKKIは、いま住んでいる東京の生活のなかで生まれる自分のシマウタを唄っていきたい、と語る。こう語るRIKKIは、いつもながら気負いのない自然体ですがすがしい。大工さんも、「そんないまのRIKKIに憧れて唄う奄美の若者も多いはず」とフォロー。

後半は、お待ちかねの民謡タイム。まずは築地俊造さんとRIKKIとで、「朝花節」「嘉徳なべ加那」「まんこい」「むちゃ加那」「糸繰り節」など。RIKKIが「島唄は、恋の唄、仕事唄、お祝いの唄と大きく分けて3種類あります」など、築地さんが調弦する間に解説。続いて大工さん登場!「ここにはシンフォニーホールがあるんで、(大工だけに)第九でもやろうかと思ったんですが」と笑わす。ところが「あ、じゃあやりましょうか」と本当に第九を三線で弾いてしまう!(しかも唄付き!)やったあとは「学者先生の前であんまり遊んではいけませんね」と反省の弁(笑)。そのあとは「でぃらぐに」「奄美小唄」と続き、「猫小(まやぐゎー)唄」では観客に「さーみゃうみゃう」とお囃子をいれさせ、堅苦しかった会場も陽気な「てっちーワールド」に引き込まれていく。

最後は「安里屋ユンタ」に続いて、築地さん、RIKKIも舞台に戻り、3人で「ワイド節」。三線と太鼓を同時に鳴らす築地さんのはなれワザに会場もどよめく(この見せ場は最後までとっておいたらしい)。「踊る人がいなかったら途中でやめますよ」と築地さんが言ったのが効いたのか、お客さん30人近くがステージにあがって踊り、シメにふさわしい盛り上がりとなった。最初は主催者側の段取りの悪さもあってどうなることかと思ったが、3人の有意義なお話と演奏が聴けて、とてもおトクなイベントだった(無料だし...、え、でもこれって税金?)。

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2003年01月27日

●太田美帆、森田照史 in 代官山クラシックス

1/26、一年ぶりに太田美帆さんのライブを見に代官山へ。太田さんは以前、2人組のSus4というユニットで聖歌をベースにした心地よいハーモニーの歌を発表していた。一般的には「おじゃる丸」のエンディングテーマ「プリン賛歌」が有名。その後、ソロになってからも聖歌っぽい歌が多かったが、なんとこの一年は三線教室に通い奄美の島唄を勉強中とのこと。こりゃ聴きに行くしかないでしょう!

今回はその三線教室を主宰している森田照史さんがライブ中盤に参加。森田さんは名瀬市出身だが、ルーツは笠利町喜瀬で唄者の親戚が多く、幼少から鍛えられていたそうだ。森田さんの三線とお囃子にあわせ「正月ぎん節」「よいすら節」などを披露。高音部の響きが聖歌と島唄で通じるものがあるようだ。森田さんも単独で2曲唄う。ナマで聴くのは初めてだが声量がすごい。

後半は強烈なパーカッションのリズムにのって、みずからもトーキングドラム化したような太田さんの声が会場を満たす。モンゴルのホーミーのような倍音の響きを感じ、ちょっとびっくり。おそらく、この1年でさまざまな民族音楽を体験し、吸収できるように挑戦してきたのではないだろうか。この冒険がより豊かな実を結ぶよう期待したい。次回のライブは、2/16銀座(売切れ)、3/29表参道FABとのこと。

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2003年01月26日

●黒田梢 in 日吉Nap

1/24、横浜日吉にあるNapで、北海道旭川出身の黒田梢さんのライブ(対バン2組)。高校生のときから氷点下の路上でストリートミュージシャンをしていた彼女が、一念発起して東京に活動拠点を移して2年目。ライブのたびに、じわじわとKOZUE節が東京で浸透しつつあるのを実感できるのがうれしい。1度ライブを見れば、誰もが圧倒されるその特異な存在感。今回も、「ソラ」「I need you」「笑わないふたり」などを熱唱。いつもながらのパワフルなギタープレイを堪能。Napでは珍しくアンコールの拍手もわき起こり、胸に重く響く歌「桜」で渋くシメる。途中でショールを脱ぎ捨てたシーンがカッコよすぎ。一緒に奈落の底まで堕ちていくぜ。

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2003年01月25日

●パナヌファCD到着

先月(12/8)発売のパナヌファのCD「PANANUFA 02」をやっと入手。パナヌファは、波照間島で日本最南端の音楽食堂「パナヌファ」を営む波照間良美さんと岩崎順さんの夫婦ユニット。

CDの1曲目は、いきなり「ちんぬくじゅうしい」で、思わずほろり。これ聴くと一気に沖縄にワープしてしまう。夕どきの家の灯りがぽっと目に浮かぶ、そんな唄。寿[KOTOBUKI]の「ちんぬく...」も好きだが、波照間さんも凛と響く声がしんみりと情景を浮き上がらせていい感じ。そのほか、「波照間島節」「月ぬ清しゃ」「沖永良部の子守唄」など、ウクレレやシンセを加えつつも抑えめのアレンジでなごみます。唯一のオリジナル曲「でいごの木の下で」も、違和感なくアルバムにとけ込んでいて好感触。次回こそは波照間に渡るぞ。

パナヌファジャケット

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2003年01月24日

●ぱにぱに in 渋谷DeSeO

1/22、渋谷DeSeOで島唄デュオ「ぱにぱに」ライブ。この日は伝統楽器メインに活動しているアーティスト4組を集めたイベントで、専門学校の東放学園が企画したらしい。そのため、一応一般公開なのだが、会場は20歳前後の学生ばっかりで面食らう。出演は、ガイネ、ぱにぱに、YASKI、セ三味ストリート(出演順)。

ガイネ(♂1人)は、自作のネイティブフルートや太鼓、オリジナル楽器を使っての演奏。ナマの音の良さが出ていたが、フルートが鳴らないアクシデントや、客のノリが悪かったりして、なかなか大変そう。でも、演奏後に「良かったね」と言ってる若い子がいて安心(?)。ちなみにガイネとは、ネパールの職業歌人のことをいうそう(ひとつ賢くなった?)。

2番手は「ぱにぱに」。なつみさんとみなみさんの2人組。沖縄の衣装で登場。2人とも横浜出身なのだが、なつみさんのお母さんが宮古出身のため沖縄にハマり、三線はもう5年目で、ぱにぱにも結成後4年経つとのこと。いきなり「ちょんちょんキジムナー」ってのがイケてます。「てぃんさぐの花」では、初めてというハモリにチャレンジ。これがなかなか。もっと腹筋が強くなって声が安定すれば強力な持ちワザになるはず。いつもは京急の弘明寺、杉田あたりで活動しているらしい(昔住んでたので懐かしい)。今年の夏にCDデビュー。

YASKIは、男女4名のバンド編成。キーボード、アコーディオン、コントラバX(?)、そして三線。ボーカルのYASKIは、高校卒業前の夏に、沖縄にいる友人の祖母の家に行き、そこで三線と出会ったそうだ。いつもはギターで、三線は数曲しかやらないそうだが、今回はイベントにあわせて全て三線で演奏。ソウルフルな歌がいい感じ。ハシケンと奄美で演奏したこともあるとのこと。

オオトリは津軽三味線大道芸人の男2人組、その名も「セ三味ストリート」。前半、津軽三味線の聴き方(拍手の仕方)のレクチャーがあったりして微妙に普通っぽかったのだが、後半からは大道芸人の誇り爆発といった感じでアクロバティックなワザを次々と繰り出し、大ウケ!(ネタバレになるので詳細は書かず)きっと伝統バリバリな三味線奏者からは怒られそうだが、これぞ路上で鍛えられたある意味正統な伝承の道ではなかろうか、などと思いつつ会場を後にするのだった。ホームページもなかなか凝ってます。

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2003年01月23日

●佐渡山豊 in 北海道立文学館

1/18、札幌の北海道立文学館で、佐渡山さんのCD「イタリアンブーツ」に収録の「4人のゲリラ」の詩人江原光太さんの出版記念会。題して「ふぶきの中の朗読・コンサート」。二十数年前、佐渡山さんはアイヌ民族活動家の結城庄司さんから江原さんの詩「4人のゲリラ」に曲をつけるよう依頼された。その後、結城さんは若くして亡くなり、江原さんとも音信不通だったが、2001年ついに江原さんを探し当てる。そして実現した今回の共演。会場には、江原さんの文学仲間を中心に多くのお客さんが集まった。

会の前半は、江原光太さんと矢口以文さんの自作詩朗読。詩人の矢口さんは、アメリカ文学を専門とする教授でもあり、江原さんとは詩を通して長いおつきあいとのこと。今回披露した詩は、出身地の東北なまりでつづったちょっぴりユーモラスかつシニカルな作品。江原さんも一番前の席で、ときおり笑顔になりつつ、感慨深げに聞き入っていた。

続いて、その江原さんの朗読。ご高齢のはずが、朗々と声を張り上げる姿は、いまだ闘志冷めやらずといった感じ。2年前に佐渡山さんとともにお会いしたときよりも、さらに元気になられた印象を受ける。今回出版された『北極の一角獣』(響文社刊)は、7年ぶり10冊目の詩集となるが、今回は本人による朗読CD付きというのがスゴイ。友人の彫刻家砂澤ビッキ氏(故人)についてつづった詩が個人的に興味深く、今回の朗読会で聞けたのがうれしかった。

次に佐渡山さんの登場。おそらくこの日の大半のお客さんが佐渡山初体験。その人たちを前にしての最初の歌は「石敢當」。ちょっと意外だったが、この場このときにそうさせる何かがあったのだろうと推察。山之口貘の詩に曲をつけた「紙の上」「会話」そして佐渡山版「十九の春」などが、今回のお客さんたちには(その客層を考えると)印象に残ったのではないだろうか。最後は「どぅちゅいむにぃ」に続いて、今回のきっかけとなった「四人のゲリラ」。江原さんの詩と佐渡山さんの曲との出会いの必然性に想いをめぐらす。今回の歌を聴いて、詩の印象を新たにした江原さんの読者も多かったのではないだろうか。

佐渡山さんのあと、再び江原さんと矢口さんが詩を朗読。また、詩人の戸塚美波子さんもお祝いの挨拶に立つ。滅多に人前には出ない戸塚さんなので間近で見るのは初めて。思わず緊張。同じく街にはなかなか出ないという浜益村在住の縄文造形家猪風来(いふうらい)さんも熱がこもった挨拶を江原さんに贈る。

閉会後は、狸小路の仔羊亭(詩人の忠海さんの店)に移って「佐渡山豊を囲む会」と称した打ち上げ。結城庄司さんのご子息である幸司さんと、サシで熱く語り合う(というか語られる)。幸司さんとは、7、8年前に東京で知り合ったのだが、その後札幌に移り、「アイヌ・アート・プロジェクト」というアート集団を立ち上げ、代表としてがんばっている。正直言って、東京にいた頃とは見違えるほど(失礼?)言動がしっかりしていて頼もしい。佐渡山さんの歌に強く感じるところがあったようで、今回思い切って連絡したかいがあった。再会の記念に自作の版画をいただく。最後に江原さんを囲んで佐渡山さん、幸司さん、高橋さん(響文社代表)、川平さん(沖縄出身羽幌在住流木アーティスト)、忠海さん、松尾真由美さん(詩人)、猪風来さん(縄文造形家)らそうそうたるメンバーで記念撮影。いやこりゃすげー。

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2003年01月16日

●安里勇 in 安里屋(石垣島)

1/10、念願だった安里勇さん(黒島出身の唄者)のお店「安里屋」に初めて足を踏み入れる。「安里屋」は、石垣市の歓楽街、美崎町のおーりとーりアーチをくぐってちょっと歩いた場所にあった。ステージは一日2回(9時&11時)とのこと。お客さんは私のほかに地元常連客数名と本土の観光客2組(10人&2人)。9時過ぎに安里さんが舞台に登場。さすがに海人(うみんちゅ)を感じさせる精悍な顔つきと艶やかで浅黒い肌が印象的。今夜は民謡初心者の観光客にあわせた演目のようで、民謡数曲のほかは「島唄」「涙そうそう」など。定番の「安里屋ユンタ」は、その唄の由来を軽い冗談まじりで解説。大げさでない静かな語り口でやさしく面白く解説してくれる安里さんがなにげにカッコいい。私としては最後に歌ってくれた「鳩間の港」がなかなかうれしかった。お店の壁に山里勇吉さんからの開店祝いの色紙発見。泡盛2杯とステージ込みで3千円。いい気持ちで宿に戻る。

Posted by nonkar at 12:38 | Comments [0]