2002年12月05日

●元ちとせ in NHKホール

12/4、渋谷NHKホールで元ちとせ初ワンマンコンサート「冬のハイヌミカゼ」。少し押して18時42分に暗転したステージに、背中一面に刺繍をした黒い羽織りに裸足という出で立ちで元ちとせ登場!インディーズデビュー曲「コトノハ」から始まり、アンコールを含めて全19曲を一気に歌いきった。

ステージ序盤、1曲終わるごとに客席には「ほぅ」とため息をつく声が広がる。なかには涙をふくひとも。そう、その圧倒的な唄声に4千人の観客ほとんどが1曲目から魅了されてしまっていた。決して歌詞自体は泣かせるものではないはず。にもかかわらず、ちとせの声がひびくと胸が、目頭が、じんわり熱くなってしまうのは何故だろう。

最初の4曲を歌いおわって、奄美のことばでごあいさつ。観客もやっとここで一息つけた感じ。「きょうは最後です。といっても2日しかないんですけど」と軽くお客さんを笑わす。

バックはGt、Dr、Perc、Kbを基本に、曲によって弦楽器カルテット、ブラス隊、胡弓、太鼓も登場するぜいたくさ。今回は、残念なことにライオンメリイさんのサポートはナシ。しかし、その豪華バック陣をまとめるバンマスは、なんと元ボ・ガンボス(どんと!)のKYONさん。最初、KYONさんとは気付かず、メリイさんがこのライブのために元ちとせより目立たないように髪を切ったのかと思ってしまった(んなわけないって)。

とにかく声が、特に高音域がうねりながら伸びる伸びる。マイクなしでもオッケーでは?と思うほど。CDではそれほど印象に残っていなかった歌も、ナマの迫力のせいか別モノのような輝きを感じる。今回改めてその魅力を発見した曲も少なくなかった(たとえば「37.6度」「三八月」など)。

途中のMCでは、ほほえましいエピソードをいくつか聞かせてくれる。奄美の両親をこのライブに呼んだのに「寒いからヤダ」と断られた話(本当はなにかしらの想いがあってのことと思うが)や、オーガスタ社長が芸名を「ちとせダイアモンド」にしようと最初言っていた話や、同じく社長が1stアルバムのタイトルを「あまみ越え」にしようと言っていた話などで、そんな話をしているときの表情は、歌ってるときとは一変して少女っぽくなり照れたような笑みがこぼれる。

なぜかマリンバ(木琴)の腕を披露する場面も。「録音スタジオに楽器がいっぱいあって挑戦したくなるじゃないですか。それでマリンバを選びました。私の4人しかいなかった小学校にも木琴ありました。上達するには皆さんの前でやるのがいいかなと」。で、Percの藤井珠緒さん(東京のお姉さん的存在)と二人で弾いた曲が「きょうの料理」のテーマ曲。NHKホールだから?

後半の「ハミングバード」では、「かわいい歌でしょ。またこういう歌を歌いたいのでそのときは皆さんも立ってくださいね」。そういえば、今回、観客は何曲か手拍子をしたくらいで、あまりノリもせず座ったまんまの姿勢。いや、それはむしろその唄声に圧倒されっぱなしだったというのが正解だろう。アンコールの最後の曲「この街」では、その観客もスタンディングオベーションだった。

コンサート・セット・リスト
1.コトノハ
2.ハイヌミカゼ
3.幻の月
4.37.6度
5.君ヲ想フ
6.Birthday
7.名前のない鳥
8.ひかるかいがら
9.Blue
10.心神雷火
11.精霊
12.サンゴ十五夜
13.約束
14.竜宮の使い
15.ハミングバード
16.ワダツミの木
17.凛とする
(アンコール)
18.三八月
19.この街

千円で購入したパンフレットには、元ちとせの人間関係図が。ちゃんと、ライオンメリイさんも、あがた森魚さん(作家陣として)も載っていてホッとする(?)。また奄美関係ではASIVIの麓さんも。あと、我那覇美奈さんも友人として文章が。そしてなぜかガレッジセールとの対談。グラビア写真は川内倫子さん撮影なのがなかなかウレシイ。

思い起こすと、元ちとせの名を初めて知ったのは、雑誌「島唄楽園」(現在の「URUMA」)の奄美民謡大会についての記事だった。まだ高校生ながら、新人賞についで優勝を勝ちとっていた彼女の存在がとても気になっていた。RIKKIに続く有望な若手唄者の登場か、と期待した。しかしその後、美容師になるために島を出たという話を最後にほとんど情報がとだえてしまう。奄美では高校卒業後、就職や進学で本土や沖縄に渡るのが一般的。このため有望な若い唄者も島を離れてしまい、その後埋もれてしまうことが多い。元もこのまま消えてしまうのか、いや、どこかで唄との接点を持ち続けていてほしい、そう願っていた。それが突然のインディーズCD発表、そして1年足らずで一気にオリコンをかけあがるとは、この数年の空白を思うと想像もつかない展開だった。

ところで、私がよく行く美容院の店長さんが奄美出身なのだが、去年の夏ごろに元ちとせのことを話したら「ふ〜ん」という生返事で関心がまったくない様子。ところがその年末に店長が「いや〜、元ちとせっていうすごいシンガーがいるんですよ!」と言うではないか!おいおい!さらに、「実はうちの若い店員が友だちで、いつか美容院で唄ってもらおうよって話してるんですよ」(!)。そうか、美容師つながり...。思わぬ盲点。もちろん、その後一気にブレイクしてしまったため、美容院ライブは実現せず...。

Posted by nonkar at 2002年12月05日 08:52
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